日本英語検定協会の実施している英語検定で、最高難易度とされる英検1級。ネット上で探すとネイティブでも合格するのは難しいだとか、様々な意見を見かけます。でも、本当にネイティブでも英検1級は難しいのでしょうか?様々な側面からデータを使って解析していきます。
結論から言うと、英検1級ぐらいであればネイティブスピーカーであればほとんど合格できます。満点を取るとなるとさすがにケアレスミスができないので、難しいというのは想像に難くないですが、合否だけで見ると9割以上の人が余裕で合格できます。ではその裏付けとなるデータをこれから見ていきましょう。
はじめに
ネイティブスピーカーとはデジタル大辞泉によれば、
ある言語を母国語として話す人。―コトバンクより
とされています。この定義から、逆説的に「日本人でも日本語検定1級は難しい」といわれることがありますが、ちょっと待ってください!
ネイティブってどのレベルの人を指すんですか?日本人でも学歴によって語彙力は異なりますよね?一般的な人と東大文学部をトップレベルで卒業する人と語彙力は異なりますよね?
それと同じように英語ネイティブといっても、様々な人がいるということをまずは頭に入れておきましょう。
TOEFLスコアから見る難易度
英検1級は日本で実施されている主に日本人を対象にした英語試験です。そのためネイティブスピーカーの方が英検を受けるにはよほど特殊な環境でない限りありません。しかし、同じ英語試験でもTOEFLであればETSが過去にデータを公表していますので、その結果をもとにネイティブスピーカーが英検で取得できるスコアを推測することができます。そこで、ここではETSの公開しているデータをもとに分析を行っていきます。
英検とTOEFL CBTスコア換算
まずは英検とTOEFLのスコア換算をしておきましょう。
CEFR | 英検 | TOEFL CBT | TOEFL iBT |
C2 | |||
C1 | 英検1級 | 240-300 | 95-120 |
B2 | 英検準1級~1級 | 200-240 | 72-94 |
B1 | 英検2級~準1級 | 123-197 | 42-71 |
A2 | 英検準2級~2級 | ||
A1 | 英検3級~準2級 |
※文部科学省の換算表および、TOEFL iBT, CBT, PBT 換算表をもとに独自に作成
上記の表を頭に入れておいてください。英検1級はTOEFL CBTで240点以上で合格レベルです。
ネイティブスピーカーのTOEFL CBT得点率
それでは本題のネイティブスピーカーのTOEFLスコアに入っていきましょう。まずはETSの公開しているグラフのほうを見てみましょう。
ETSの公開しているデータによれば、ネイティブスピーカーのスコア取得率は最低でも233、その後徐々に得票する割合が増え、283~290でピークを迎え、満点はやはり減少しますが、それでも25%の受験者が満点(もしくは近い)をたたき出しています。
あれっ?ちょっと待ってください。
英検1級のTOEFL CBT換算はいくつでしたか?そう、240点でしたよね。
ということは、ネイティブスピーカーの中で英語ができない(CBTで得点できなかった)人達でも、英検には合格できてしまうレベルにあるのです。
日本人があれだけ苦労し、合格率1割を切るとも言われる難易度の英検をネイティブであるというだけであっさりと合格してしまうのですから、びっくりですよね。
実際にネイティブの人はどのぐらい得点できるのか?
前項ではTOEFLを英検にスコア換算した場合、ネイティブの人たちは余裕で合格できてしまうということを説明しました。でも、日本人が英検1級合格後、TOEFLやTOEIC、IELTSなどほかの英語試験を受けたとき、そう簡単に換算通りのスコアは取れませんよね?じゃぁ、ネイティブの人たちも英検1級はもしかしたら、難しいんじゃないのか?
ということで、どのぐらい取れるのかを調べてみました。内容は主にYouTubeなどで公開されているもので、このページではそれらをまとめたものになります。YouTubeの尺の関係か、すべての問題を解いてはいませんし、2次試験に関しては実施の仕様がありませんので省略されています。
表で結果をまとめています
国籍 | 結果 | チャンネル |
アメリカ人 | 1問間違い | Misaki RDHジャパングリッシュ英会話 あらた Arata |
カナダ人 | 1問間違い | YASSler Journal (ヤスラーじゃーなる) |
イギリス人 | 1問間違い | 華音チャンネル (Kanon) |
詳細結果については全部公開されていないということもあり、わかる範囲での表記とさせていただいています。いずれにしても余裕で合格レベルは超えていますし、満点近いスコアを取得している方もいましたので、ネイティブの方にとっては英検1級は余裕で合格できるようです。
その中でも比較的きちんと検証されてたのが華音チャンネルでしたので、動画も張っておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=a6GeVrbmaoM
満点に関しては、英検が日本で作られてる試験ということや英語がアメリカ英語に偏っているということもあり難しいようですが、英検1級で最も難関とされる語彙問題についてはほぼ全員が全問正解しているということから、英検の難易度を想像していただければと思います。
語彙量から比較
英検1級の語彙数は公表されていませんが、こちらのサイトで詳細に分析されています。多くのサイトでも公開されている通り、英検1級はおおよそ1万語~1万6千単語前後の語彙が問われる試験です。
ではネイティブの人たちはどのぐらいの語彙量を持っているのでしょうか?これも研究により分かれますが、教育を受けていない人で10,000単語、教育を受けた人だと20,000単語を知っているとのことです(Talk English.com / BBCニュースより)。
BBCの記事では加えて、ノンネイティブ(日本や台湾など)の人たちは9年間もの学習でも、半分の生徒は頻出単語1000語を覚えるのに苦労していると書かれていました。つまり、英検1級をノンネイティブとして取得するということはそれだけでもかなり高度な英語力を持っているということが言えるのです。
ちなみに!
英語すべての語彙数は171,476単語あるそうです(1989年出版のOxford Dictionaryに収録されている語彙数)。それと比較すると、英検1級とはいえ、十分の一程度というのは気が遠くなってしまいますね。
まとめ
TOEIC900や英検1級はネイティブでも難しいという「噂」が流れることが良くあります。ネット上で調べても様々なブログ記事で両意見があり、どちらが正しいのか判断しかねていた方も多いかと思います。そんな方に、ここでは客観的なデータを使って英検1級の難易度を説明しました。
ネイティブでも難しいという議論には、このデータが反証してくれているのではないでしょうか。
なお、ETSが公開しているデータにもあるように、ネイティブといっても様々なバックグラウンドの人がおり、同じ国の中でも教育バックグランドが異なれば、英語レベルも異なります。したがって、ここで提示したデータもネイティブの人が全員取得できるものを証明するものではありません。ネイティブでも難しいという噂もそういったところをついているのかもしれませんが、どのようなネイティブかということは確認しておいたほうが良いでしょう。
いずれにしても、TOEICにしろ、TOEFLにしろ、英検にしろ大学生レベルのネイティブであればいとも簡単に高得点をとれるということが分かっただけでも良かったのではないでしょうか。