皆さんは語学学習の進捗の確認はどのようにされていますか?多くの場合、公式の語学試験を受けて合否および能力の確認を行われてるのではないでしょうか。例えば英語であれば、英語検定やTOEIC、TOEFLといった試験がありますよね。しかしそれぞれの試験は評価方法が異なっているため、難易度の比較が少々難しかったりします。英語に関しては数多くのサイトで比較が行われているので大いに参考になりますが、その他の語学はなかなか比較が難しいのではないでしょうか?そういった問題を解決するために現れたのがCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)です。
CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)とは?
CEFRとは、日本語では「国際基準」などと意訳されることもあります。確かに国際基準ではあるのですが、2001年にヨーロッパで策定された枠組みです。そのため、基本的にはEU域内での比較がもとになっています。第二言語の使用、教育、学習の達成度などを言語の垣根を越えて客観的に評価する目的で策定されました。20年以上にわたる研究と実証実験の末開発されたもので、非常に信頼性の高い評価基準になっています。ヨーロッパで実施される語学試験は基本的にすべてCEFRのレベルで分けられています。現在では38の言語試験がCEFRに対応しているとのことです。
レベル分け
CEFRでは言語レベルを6段階に分けています。下はA1から上はC2という形になり、それぞれの目安としては下記の通りとなります。
A1 | 学習を始めたばかりの者・初学者 |
A2 | 学習を継続中の物・初級者 |
B1 | 習得しつつあるもの・中級者 |
B2 | 実務に対応できるもの・準上級者 |
C1 | 優れた言語運用能力を有するもの・上級者 |
C2 | 母語話者と遜色のない熟練者 |
A1~C2という形で分かれていますが、それぞれのアルファベットは
- A:基礎段階の言語使用者
- B:自立した言語使用者
- C:熟達した言語使用者
という形で分別されていて、数字はレベルを表しています。レベル2のほうが上級レベルということになります。
実際に仕事などでターゲット言語の使用を考えているのであれば、B2レベル以上を目指すようにしましょう。B2レベルとは英検でいうと準1級、中国語検定でいうと2級レベルが対象となります。旅行などで使う場合でもB1ぐらいはあると便利でしょう。C1以上になると、かなり高度な言語運営が可能と評価されます。残念ながらあの合格率1割の英検1級でさえ、C1レベルというのは驚きますね。いかに「ネイティブレベル」が難しいかということが伺えます。
なお、CEFRについてはブリティッシュ・カウンシルが詳細なレポートを出していますのでそちらを、詳細はそちらを確認してみてください。
日本では?
日本では英語検定協会が英語検定をリニューアルし、全レベルでCEFRに対応させました。それによりCEFRの認知度も非常に高まってきているのではないでしょうか。英検はレベル別に加え、CSEスコアによって評価することでCEFRとの比較をより分かりやすくできるように改善されています。
英語に関しては、文部科学省が各種英語試験(TOEIC、ケンブリッジ英検、TOEFL、GTEC、TOEFL iBT、IELTS)の難易度比較表をCEFR基準で策定し公表しています。英語試験の比較表は数多くありますが、前述した英語試験であれば、こちらの表が最も信頼性の高いものになるかと思います。
英検や文部科学省の取り組みとは別に、英語やその他の外国語をCEFR基準で評価する動きは各大学でも行われています。茨城大学では英語コミュニケーションの熟達度を測定する目的でCEFRに準拠仕様とする取り組みや、多言語を共通の基準枠で評価しようとする試みが東京外語大学や大阪外語大学で実施されています(CEFRと日本の英語教育)。
このように、日本でも様々な形で言語をCEFR基準で評価しようとする動きが活発になっています。英語はもちろん、その他の外国語を勉強している方も、CEFRという評価基準は知っておいたほうが良いでしょう。
その他の国、言語での取り組み
CEFRはヨーロッパでの基準ですのでヨーロッパ言語の多くはCEFR基準で評価が可能になっています。例えばフランス語能力を測るDELF・DALFは完全にCEFR対応となっていますし、スペイン語を評価するDELEもCEFR基準となっています。
中国語
その他の外国語としては、中国政府の実施しているHSK(漢語水平考試)が2010年にリニューアルされすべてのレベルがCEFRに完全準拠しました。また、台湾では政府主導でCEFRの導入が進められ、英語をはじめとしたさまざまな言語能力試験を共通参照枠レベルで評価しようとする試みが行われています。台湾政府の実施している中国語試験、TOCFL(華語文能力測験)は、こちらもCEFRに完全に準拠したものになっています。
なお、HSKのレベルと共通参照枠レベルの対照については様々な異論が出ています。台湾やドイツなどはHSKのCEFR基準は誤りであると指摘しています。HSKのCEFR参照に関する異論や、それを踏まえたうえでの比較表は別記事にまとめてありますので、確認してみてください。
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韓国語
韓国語の評価としては、韓国の韓国語能力評価院が実施しているKLAT(Korean Language Ability Test)がCEFRに対応した評価を実施しています。1級はA1、上は6級のC2まで完全準拠となっています。
そのほかの韓国語評価試験:ハングル能力検定やTOPIK(韓国語能力試験)は現時点では共通参照枠への対応は行われていません。
ロシア語
ロシア語はロシア連邦教育科学省が認定しているロシア語検定試験(TORFLもしくは、TPКИ = Тест по русскому языку как иностранному)がCEFRに準じた評価を行っています。レベルわけは下記の通りとなっています。
- 入門レベル TEU/ТЭУ(A1)
- 基礎レベル TBU/ТБУ(A2)
- 第1レベルTRKI-1/ТРКИ-1(B1)
- 第2レベルTRKI-2/ТРКИ-2(B2)
- 第3レベルTRKI-3/ТРКИ-3(C1)
- 第4レベルTRKI-4/ТРКИ-4(C2)
ロシア語能力検定委員会の実施しているロシア語能力検定はCEFRには対応していませんが、東京外国語大学が参考対照表を公開しています。
CEFR | ロシア語能力検定試験 | ТРКИ/TORFL/TRKI | 通訳案内士 |
A1 | 4級 | 入門レベル(TEU) | |
A2 | 3級 | 基礎レベル(TBU) | |
B1 | 2級 | 第1レベル(TRKI-1) | |
B2 | 2級 | 第2レベル(TRKI-2) | |
C1 | 1級 | 第3レベル(TRKI-3) | 合格の可能性あり |
C2 | 第4レベル(TRKI-4) | 合格 |
まとめ
ヨーロッパで各国の言語を共通に評価する枠組み、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)が2001年に導入され、20年近くが経とうとしています。その間にCEFRはヨーロッパだけでなく、日本、中国、台湾、韓国などの東アジアでは徐々に語学試験をCEFRに対応する動きが出てきています。いずれは東アジアだけでなく、様々な言語もCEFRすることが予想されます。
CEFRに対応しないまでも、CEFRとの比較を試みる動きは今後ますます加速するでしょう。英語をはじめ、様々な外国語を勉強する際はCEFRという共通の尺度を知っておくと比較が簡単になりますし、試験を受けるのが楽しくなりますよ♪